古文といえば、ちょっと難しい印象があるかもしれません。しかし、よくよく読み込んでみると、今から1,000年くらい前の日本人の恋愛模様がわかってきます。今回は伊勢物語を題材にして、そのあたりのことについて国語科中澤先生と生徒の話を取り上げてみました。
先生、今日の古文の授業で勉強した『伊勢物語』は、恋愛の話が多いんですか?
その通り。主人公のモデルが、恋多き貴公子、在原業平(注:「ありわらのなりひら」です…「ざいばらぎょうへい」なんて読んじゃダメだよ~)だから、情熱的な恋愛の話が多いの。
あ、在原業平って、百人一首の「ちはやぶる神代も聞かず竜田川 からくれなゐに水くくるとは」って歌の作者ですね!
よく覚えていたね。『ちはやぶる』は「神」にかかる「枕詞」。マンガのタイトルだけじゃないんだよ。歌の意味は、「はるか遠い神代でさえも聞いたことがない。竜田川がもみじを浮かべ、真っ赤な色に水を絞り染めしているなどということは。」です。竜田川に流れる紅葉を、「紅色(べにいろ)の絞り染めのよう」なんて表現するところが、みやびだね。
洗練されて、風流なこと。『伊勢物語』は「みやびの文学」なんて言われることもあるのよ。
そうなんですね。ところで『伊勢物語』に書かれる恋愛って、どんなものですか?やっぱり女子としては、恋バナに興味があって…。
一番有名な話は「芥川」という章段かな。
「昔男がいた。大事に育てられ、手も届かない姫君に恋をして、何年も求愛し続けていたが、ある時、恋心が抑えきれずに、女を盗み出して逃げてしまった。」
そう。今だって犯罪だけど、この男の行動は当時大スキャンダルになった。
この物語の「女」にもモデルがいて、後に「二条の后」と呼ばれる「藤原高子」がその人なんだ。
うん。清和天皇の后。でも業平が一緒に逃げた頃は、まだ后じゃなかった。藤原氏が天皇の后にしようと大事に育てた姫君。つまり帝の婚約者だった。
えーっ!?そんな人を盗んで逃げたなんて、業平大丈夫!?
どの時代でも、障害が多い恋の方が、燃え上がるのね。(うっとり)
とにかく、姫を連れて逃げて、芥川って川のそばを通ったとき、草の上に光る露を見て、女が男に聞くの。「あのきらきら光るものはなーに?」
深窓の姫君だから、露を見たことがなかったのね。その時業平は、追っ手が気になって余裕がなく、答えてあげられないんだけど、世間知らずで子供のような姫の言葉は、業平の心に深く刻まれたの。後で思えば、この時が男にとって一番幸せな時間だったかもね。
むむむ?なんだか悲恋の予感…。この二人、どうなっちゃうの??
つづく予定