和洋国府台女子中学校高等学校

お知らせ

「ツナグヒ」が拓く、新しい学びのかたち

2026.06.18



「ツナグヒ」が拓く、新しい学びのかたち


生徒の「好き」を見つける土曜プログラムの挑戦



和洋国府台女子中学校・高等学校 中澤美紀副校長 × 丹羽教諭 対談


改革の始まり――余白が生む創造性



土曜日を、生徒と教員の「余白」に変える


和洋国府台女子中学校・高等学校が2026年度から始めた「ツナグヒ」。毎週土曜日に展開される任意参加型のプログラムは、従来の学校教育の枠を超えた挑戦として注目を集めている。中澤美紀副校長と、プログラムのコーディネーターを務める丹羽教諭に、この改革の背景と実際について聞いた。




「改革のきっかけは、生徒も教員も、とにかくやることが多すぎてアップアップの状態だったことです。創造的な取り組みを行う余裕がない。余白を作らないと、クリエイティビティは出てこないだろうと考えました」
(中澤副校長)


そこで学校が選んだのは、土曜日の授業4時間分を平日に移し、土曜日を自由な時間にするという大胆な改革だった。ただし、学力は決して下げない。カリキュラムは変えずに、時間を再配分する。その空いた土曜日に、生徒が自分で選んで参加できる多彩なプログラムを用意した――それが「ツナグヒ」だ。



探究学習が示した、生徒変容の可能性


この改革の土台には、同校が先駆的に取り組んできた探究学習の経験がある。




「探究を始めてから、生徒も教員も本当に変わりました。教科だと、正解を教えなければならない、知らないことがないように準備するのが教員だという意識がありました。でも探究では、答えのない問いに対して生徒と一緒に学んでいく。それでいいんだという意識改革ができたんです」
(丹羽教諭)


探究1期生の変化は明らかだった。グループワークが主体の授業の中で、生徒たちは活発にディスカッションができるようになり、自分の意見をしっかり言えるようになった。授業の温度感が、フラットでシーンとした状態から、立体的に盛り上がるものへと変わっていった。


特に効果的だったのが、高校1年生で実施した「日本文化ゼミ」だ。教員が自分の興味のある分野でゼミを作り、学年・クラス関係なく生徒が分かれて参加する。学ぶことが好きな教員たちが、自分で楽しい分野を見つけていく。そのベースが、今回の「ツナグヒ」につながっている。




立体的な学びをデザインする



教科の枠を超えて、世界をつなげる



「学校の学びって、あたりまえですが教科に分かれているんです。でも実は学問って、ものすごくつながっている。有機的につながる学びを学校の中にデザインできたら、生徒にとっても教員にとっても心が動くものになるんじゃないか、という視点でプログラムを組み立てました」
(中澤副校長)


「ツナグヒ」の講座は実に多彩だ。大学教授による最先端の学術講座、プロフェッショナルによる実践的な講座、教員が語る興味深いテーマ、そして卒業生によるキャリア講座。2026年5月の開始から3回目の実施時点で、生徒の申し込み率は延べ8割に達している。




「本当に予想以上でした。欠席がすごく少なくて、申し込んだらほとんどの生徒が参加するんです。やっぱり自分で選んで来たっていうことが大きい。本当は休んでいてもいいのに、自分で選んで参加する生徒たちなので、楽しそうで一生懸命なんです」
(丹羽教諭)


プログラムの幅広さも特徴的だ。『K-POPで始める!ハングルと韓国語の世界』のような生徒の興味に寄り添った切り口もあれば、英検講座のような実を取るものもある。憧れの仕事を知る講座もあれば、少人数で対話をベースにした深い学びの講座もある。



プロの現場に触れる感動


印象的だったのは、現役アナウンサーによる「伝える」技術講座だ。テレビで実際に活躍するアナウンサーが、発声や話し方のプロの技術を伝える。




「もう第一声が違うんです。生徒たちは『おー!』って。本物のプロだ、って」
(丹羽教諭)


任意参加だからこそ、集まる生徒の熱量が高い。講座終了後には長蛇の列ができ、生徒たちが質問に殺到した。広報PRパーソンの講座では、控え室まで質問に来る生徒もいたという。




深まる学び、広がる繋がり



レゴで探る「自分らしさ」


ユニークな講座の一つが、レゴを使った「自分らしさ」探求ワークショップだ。レゴ®シリアスプレイ®という手法を使って、男らしさ、女らしさ、自分らしさについて考えさせる。




「講師の先生がすごくびっくりされていました。生徒たちの言語化が上手だって。大人だと具体的になりがちなんですが、中高生は抽象度の高いのを作って、それを上手に表現するんです。中高生ならではの感性が出ていました」
(丹羽教諭)


このワークショップは10人ほどの少人数。中1から高3まで、学年を超えて集まった生徒たちが、普段向き合わない自分の気持ちと向き合っていく。



デザインから生まれる新たな興味


プロのデザイナーによる「プロフィールカード作成講座」も人気だった。文字の配置、レイアウトの基本をプロから学び、自分の名刺をデザインする。




「講師の先生が色彩について少し話したら、振り返りシートに『次は色彩についてもっと学びたい』と書く生徒が複数いたんです。一つの学びから派生して、次はこういうことを知りたい、という連鎖が生まれているんです」
(丹羽教諭)


AIが拓く未来の学び


併設する和洋女子大学のAIライフデザイン学部との連携も、「ツナグヒ」の大きな特徴だ。オリエンテーションでは、全員が和洋女子大学の鬘谷要教授の講演を聞いた。




「AIで制服をデザインする講座では、エルメスやシャネルのコレクションをAIに学習させて、そのブランドの世界観で高校生の制服をデザインさせていました。生徒たちは大喜びでしたが、それだけでは終わらない。『AIを何に使い、何に使うべきでないか』『哲学の大切さ』『人を知ることがAI活用につながること』など、研究者ならではの深い視点からお話しいただきました。」
(中澤副校長)



「ツナグヒ」が育むもの



「出る杭」として生きる――卒業生が示すロールモデル


「ツナグヒ」で特に反響が大きいのが、卒業生によるキャリア講座だ。オリエンテーションでは、卒業生でジャーナリストの神山さんの講演を生徒たち全員で聞いた。




「『出る杭になりましょう』『いつも自分だけは自分の味方になってあげてほしい』という言葉が、すごく生徒たちの心に響いたんです。自分と同じ学校の卒業生が、挫折もしながら自分の道を切り開いていく。そのキャリアを間近で聞くことが、どれほど彼女たちの心に響くか、私たちも驚きながら実感しています」
(中澤副校長)



「本校の生徒はすごく優しくていい子が多いんです。でも、周りへの気遣いは上手なんだけど、自分の声を聞くことが後回しになってしまう。女子は特に、本当に自分が思っていることに蓋をしてしまうことがある。だからこそ、自分で考えて行動する、自分で選択するという経験を、中学入学からの6年間でたくさんしてほしい」
(丹羽教諭)


家族もつながる、社会ともつながる


「ツナグヒ」のもう一つの特徴は、保護者も参加できることだ。中には卒業生の姉が「営業の仕事で伝え方に悩んでいる」と、妹の参加を知ってアナウンサーの講座に来て受講したケースもある。




「『ツナグヒ』っていう名前は本当にぴったりだと思います。同級生だけじゃなく、中1から高3までの生徒全体とつながれる。教員や保護者以外の社会にいる大人とつながる。家族とつながる。枠を取り払うことが、創造性を高める取り組みになっていると感じます」
(中澤副校長)


進化し続けるプログラム


初回から手応えを感じている一方で、課題もある。コーディネーターを務める丹羽教諭の苦労は並大抵ではない。外部講師との調整、学校文化との接続、制度の整備――走りながら整えている部分も多い。




「まだ始まったばかりですが、生徒たちが今まで見せなかった顔を見せてくれる。授業でも熱心ですが、『ツナグヒ』では違う生徒の顔が見られるんです」
(丹羽教諭)


まだ実施3回目。これからも生徒のリクエストに応えながら、講師陣もブラッシュアップしながら、プログラムは進化していく。


「止まらずに前進している。それが『ツナグヒ』です」





【編集後記】取材を終えて


取材を終えて印象的だったのは、お二人の表情の明るさだった。改革の苦労よりも、生徒の変化に対する喜びが勝っている。「余白」から生まれる創造性――それは生徒だけでなく、教員にとっても、そして学校全体にとっても、大きな可能性を秘めているのだと感じた。






ツナグヒの様子は、Instagramで紹介しています

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